私は2004年くらいからアニヲタになった。その当時はまだオンライン配信も黎明期で、アニメを見るときは大体いつも2:30まで粘って本放送を見る(2chの祭りに参加しながら)か、DVDに録画してから見ていた。
2007年くらいからアニメがヲタク専有のものではなくなり、一般にも浸透するにつれて、違法ダウンロード問題が可視化されてきた。クリエイターを守れる制度が必要だとは思いながらも、どこかで、クリック一つでコピーできてしまうコンテンツの複製をすべてトラッキングしてそのひとを罰する、そんなことは不可能なんじゃないかとも思っていた。
2011年にはじめてスウェーデンに来て、最初に友達になったのは日本アニメの大好きなスウェーデン人だった。その子は、スウェーデンで放送されているはずもない、翻訳版などでているはずもないとあるアニメが大好きで、そのアニメから日本のことを知った、アニメで見た日本が最高にかっこいいとおもったから日本語を勉強することにした、と熱っぽく語ってくれた。
その子は翻訳版も海外正規版も出ていないそのアニメを違法ダウンロードで知り、そしてその後日本のファンになった、と教えてくれた。
これは単なる一例で、実際には4年間で同じようなひとたちに何百人と会ってきた。彼ら・彼女らは違法ダウンロードをしながらも、日本文化の一番のファンであり、発送料がものすごくかかるグッズやフィギュアを日本から取り寄せ、ファンミーティングを積極的に行い、日本語を独学で勉強していた。さらに翻訳版のでていないアニメを自分たちで翻訳し、アニメのGIFやネットミームを作ってはせっせと拡散し、日本の良さを世界に広めていた。
彼らこそが「クールジャパン」の立役者だったのだ。
政府が目の色を変えて煽っている日本の「クールジャパン」は、違法ダウンロードをしている人によって興隆している。そして彼らの違法ダウンロード・違法ファイルシェアを取り締まることはクールジャパンそのものを潰すことになりかねないのだ。
日本はアメリカとは違う。
コンテンツの多くが海外でもそのまま英語で消費され、そのままの形で受け入れられるアメリカと違い、日本のコンテンツは翻訳ありき、そして、コンテンツの発信者側からは予測不可能な消費のされ方をしてきた。
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これらは著作権的にはアウト(グレー?)だが、こういったコンテンツの消費のされ方が近年の日本のポップカルチャーを興隆させてきたと言っていいし、そもそもアニメやマンガといったポップカルチャーは、リミックス・コピー・シェアなどといった「デジタルな消費のされ方と親和性が非常に高い」という特徴を持っていたからこそ、文化としてここまで大きく成長したのだ。
さらにいえば、アメリカと比較すれば国力も企業体力もない、またあったとしても依然国内市場にかかりきりになっている日本にとって、違法ダウンロードの取り締まりはさらに無意味なのだ。アメリカですら違法ダウンロードを止めることなどまったくできていないのだから。
繰り返して言う。
「クールジャパン」は違法ダウンロードや、現行の、デジタル的な使用のされかたを想定していない「著作権侵害」によって興隆してきたものであり、
海外に受け容れられてきた日本のコンテンツは常に、デジタルな消費のされ方と高い親和性を持っていたからこそ、ここまで発展したのであり、
世界中を監視できるだけの強大な国力と企業力を持つアメリカと日本は違うため、日本はアメリカのように世界中のコンテンツトラッキングを行う必要も意味もないのであり、
だから日本は、デジタルコンテンツの特異性と、それに付随するユーザーの権利とクリエイターの権利をデジタル時代の観点から捉え直した、まったく新しく、先進的な著作権法を作るべきだし、つくれて然るべき国なのである。
残念ながら、2012年のACTAの批准や、2013年の違法ダウンロード刑事罰化で、日本はデジタル時代の著作権という議論において非常に頭の固い、時代遅れの考えしか持ち合わせていないことを世界に曝してしまった。ACTAなんて批准してるの世界中で日本だけで、ものすごくダサい。
日本のコンテンツは素晴らしい。だから世界中の人を惹きつける。また、日本はデジタルテクノロジーに関しても、(少なくとも)世界に先駆ける、先導的な立場を取ってきた。
だから、著作権法も世界でもっとも先進的で、もっともかっこよく、もっともデジタルなものであるべきだ。
日本の著作権法改正議論が「パクリ」「パクリじゃない」などという表面的なものに終始せず、本質的な議論になってくれることを願いながら。
コメント
[…] […]
[…] いままで、日本こそが世界で初めてデジタル時代の著作権を変えるにふさわしい国だと散々述べてきた。それでは、なにをどーやって変えればよいのだろうか??今回はそれを説明したい。 […]
[…] (日本こそが著作権を変えるべきという議論はこの記事やこの記事やこの記事やこの記事で語っているので、興味ある方は是非。) […]
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